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12月25日の世界の昔話クリスマスのかね アメリカ


クリスマスの鐘


むかしむかし、アメリカのある町に、大きな教会がありました。

クリスマスの鐘


教会には天にそびえる高い塔があって、立派な鐘(かね)がつるされています。

クリスマスの鐘


その鐘には『クリスマスの夜にだけ鳴る』という、不思議な言い伝えが
ありました。


ところがまだ一度も、この鐘が鳴る音を聞いた人はありませんでした。
クリスマスが近づくと、町の人たちは塔を見上げて話し合います。
「今年こそは、あの鐘の鳴る音が聞けるかなあ?」

クリスマスの鐘


「わしは八十年も生きているが、まだ一度も聞いたことがない。
なんでも、わしのじいさんが子どもの頃に聞いたそうだが、それは
素晴らしい音色だったそうだ」
「どうすれば、あの鐘はなるのだろう?」
「神さまに贈り物をすれば、鳴るという話だよ」

クリスマスの鐘


さて、この町のはずれの小さな村に、ペドロという男の子と弟がいました。
ある日、ペドロは弟に言いました。
「クリスマスの教会って、とってもにぎやかなんだってさ」
すると弟は、目を輝かせてせがみました。

クリスマスの鐘


「わあ、ぼく、行ってみたいなあ」
「よし、連れて行ってあげるよ」
 ペドロは、弟と約束しました。
 そして、待ちに待ったクリスマスの前の夜。

クリスマスの鐘


 ペドロと弟はしっかりと手をつなぐと、町へ向かいました。
町の入り口まで行った時、二人は女の人が倒れているのを見つけました。

クリスマスの鐘


「どうしたのかな? この人、動かないよ。お兄ちゃん、どうしよう?」
「このままほうっておいたら、こごえ死んでしまう。困ったなあ?」
 あたりには、誰もいません。
 ペドロはポケットから銀貨を取り出すと、弟に差し出しました。

クリスマスの鐘


「この銀貨は、神さまへの贈り物だよ。
ぼくはこの人を助けるから、一人で行っておいで」
「えっ、ぼく、一人で行くの? お兄ちゃんだって、あんなに行きたがっていたじゃないか」
「いいんだ。さあ、行っておいで」
弟は仕方なく、一人で町の中へ入っていきました。
教会の中は、たくさんの人でにぎわっていました。

クリスマスの鐘


どの人も神さまへの立派な贈り物を、得意そうに持っています。
キラキラと、まぶしく光る宝石。
山のような、金貨。
立派な、銀食器。
誰もが素晴らしい贈り物をして、鐘を鳴らそうと考えていました。
けれど、鐘は鳴りません。
「今年こそ、鐘を鳴らしてみせるぞ!」

クリスマスの鐘


最後に王さまも、命の次に大切にしている金の冠(かんむり)をささげました。
(さすがに、これで鐘が鳴るだろう)
みんなはジッと、耳をかたむけました。
でも高い塔の上は、シーンと静まり返ったままです。

クリスマスの鐘

「ああ、なんと、王さまの金の冠でもだめなのか」
「きっとあの鐘は、永久(えいきゅう)に鳴らない鐘なんだ」
「そうだ。そうに違いない」
 人々があきらめて帰りかけた、その時です。

クリスマスの鐘

♪カローン、コローン、カローン、コローン・・・・・・。
 突然、塔から美しい鐘の音が響いてきたではありませんか。
「あっ! 鳴った。とうとう鳴ったぞ!」
「なんて、美しい音色なんだ」
「それにしても、鐘を鳴らすほどの贈り物をしたのは、いったい誰だろう?」
 王さまをはじめ、人々はいっせいに振り返りました。

クリスマスの鐘


 するとそこにはペドロの弟が、はずかしそうに立っていました。
「ぼく、お兄ちゃんから預かった銀貨を一枚、神さまにささげただけだよ」
 弟は、そう言ったあと、
(お兄ちゃんの助けてあげたあの女の人は、きっと大丈夫だろうな)
と、思いました。
素晴らしい贈り物というのは、高価(こうか)だからよいのではありません。
大した物ではなくても、贈る人の心がこもっていればよいのです。

クリスマスの鐘

 メリークリスマス
おしまい